日本酒には、製造方法やお米の削り方などによって、様々なバリエーションがあります。
そのため一口に日本酒と言ってもその味わいや風味などは千差万別であり、幅広い人の嗜好に合う品がそろえられていると言えるでしょう。
たとえば、「純米酒」と言うのはあくまでものバリエーションの1つであり、さらに純米酒にもいくつかの分類が用意されています。
ここまでの話を聞くと難しく感じるかもしれませんが、整理しながら1つずつ確認していくことで、シンプルに理解することができるでしょう。
そのためこの記事では、純米酒のバリエーションや精米歩合の意味、その他の日本酒の分類などを簡単に解説します。
純米酒やその他日本酒のバリエーションについて気になっている方は、ぜひともご参考にしてください。
Contents
純米酒のバリエーションに関して
ここでは、純米酒の概要や楽しみ方などについて解説します。
純米酒とは
純米酒とは、米と米麹、そして水だけを用いて作られた日本酒のことを指します。
酒税法上の純米酒の正確な定義は、以下の通りです。
純米酒の定義
- 米と米麹だけを使う
- 米麹は15%以上使用する
- 使用する米は農産物検査法で三等以上に格付けされた米たお米を使用する
「米と水」だけのシンプルな材料で作っているため、米本来のうま味やふくよかな香り、そしてコクや深み、酸味等がダイレクトに楽しめる味わいです。
純米酒はさらに精米歩合や製造方法などによって純米酒・特別純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒に分類されます。
リーズナブルな価格帯の純米酒も多く、日常的に楽しむ食中酒としては非常に重宝します。
純米酒の楽しみ方
純米酒は、米と水だけのシンプルな材料で作られているだけあって、ご飯のおかずになるような料理全般とよく合います。
そのため、魚料理や肉料理、中華料理や洋食など幅広く様々なジャンルの食べ物と相性が良い、食中酒にはピッタリのお酒だと言えるでしょう。
また、様々な温度で楽しむことができるのも、純米酒の魅力です。
特にお燗で飲むと、純米酒が持つ一番の魅力である米のうま味や酸味、深みを感じられるでしょう。
よりお燗は料理の脂を口中でしっかり流してゆきます。
温かい状態なら体内へのアルコールの吸収速度も緩やかで代謝も早く、身体に優しい点もおすすめしやすいポイントです。
っこりとした酔い心地が続いてゆきます。
もちろん冷酒もおいしく飲むことができ、料理や季節に合わせて自由に楽しめる点が、純米酒の魅力になっています。
純米酒以外の特定名称酒
一方、米と水だけでなく、製造の過程で醸造アルコールが加えられている日本酒のことを、本醸造酒などと呼びます。
醸造アルコールとは、サトウキビを中心とした原材料を発酵させた、純度の高いアルコールを指します。
例えば本醸造酒は、本醸造酒・特別本醸造酒などと区別されます。
アルコール添加されている酒は大吟醸、吟醸などもあります。
酒税法上では、純米酒の4バリエーションと本醸造酒などを合わせて「特定名称酒」と呼びます。
純米酒とアルコールを添加したお酒は「目指す味わいが異なる」と理解しておくと良いでしょう。
精米歩合
ここではお米を磨く「精米歩合」について解説します。
精米歩合とは
精米歩合とは、材料となるお米を削る(「精米する」と言います)割合のことを指します。
お米の中心部にあるでんぷん質を活かし、たんぱく質や脂質などを精米して削ります。
簡単に申し上げると沢山磨くと酒が綺麗になり、あまり
磨かないと米の個性や特徴をより感じます。
的の酒質設計によって変えてゆくのでどちらが良いという訳ではありません。
たあまり磨かない酒は栽培方法によりたんぱく質や脂質などの含有量が少ない米を使用します。
米の持つ特徴や個性を活かす場合は精米し過ぎずお米由来の味わいをしっかりと感じられる酒を造り、醸し、綺麗で上品な味わい設計するならばより精米歩合を上げ、米粒の中心部分のみを使用します。
もちろん精米歩合だけで酒質やタイプが決まる訳ではありません。
たとえば、純米大吟醸と認められるには、精米歩合が50%以下でなければなりません。
精米歩合の違いによっても、純米酒を含む日本酒の個性がでてくると言えるでしょう。
精米歩合の例
例えば「精米歩合:40%」であれば、米の外側を60%削り、中心部分の40%を活かして造りに使用します。
米粒の外側を多く削ると綺麗な酒を作ることができますが、その分どうしても同じ米の量を使っても出来上がる酒の量は少なくなってしまいます。
つまり、精米歩合の数値が低くなるほど外側を多く削っている分、「贅沢なお酒」になるということが言えるでしょう。
精米歩合が高いお酒にはそれだけ多くの米が使われているということであり、その分値段も高くなる傾向がありますが、差別化した原料米や仕込み、貯蔵、熟成等を行い既存クラスとは区別してゆきます。
従って「精米歩合が高い=高級品」ではなく、使うお米の種類や等級、造り方、貯蔵法、熟成期間、各蔵元の酒質に対する捉え方や消費者への想い等、手間暇を掛ける以上の価値観が反映させているのでしょう。
ちなみに、私たちが普段炊いて食べる際のお米も精米されています。
精米されていないお米のことを玄米と呼び、私たちの普段食べている白米の精米歩合は90%程度です。
この数値を見ると、いかに日本酒が贅沢にお米を精米しているかが分かるでしょう。
現在では、純米酒に精米歩合の制限はありません。
これは、醸造技術向上によって精米歩合による条件を付けなくてもおいしい日本酒を造れると判断されてのことです。
純米大吟醸酒(大吟醸酒)
純米大吟醸酒(大吟醸酒)とは、精米歩合が50%以下で造られた、香味と色沢の良い日本酒のことを指します。
ここでは、吟醸造りの意味や純米大吟醸酒(大吟醸酒)の味わいについて紹介します。
吟醸造りとは
簡単に述べますが吟醸造りとは、「よりよ磨いたお米を通常よりも低温で長時間かけて発酵させ、粕の割合を高くし吟醸の香りを醸し出す方法」のことを指します。
よく磨いたお米を低温で1か月近い期間をかけて発酵させる方法です。
しかし削りすぎたり、低温すぎると酵母が活動しにくくなるため、発酵が弱まり、酒質にも影響が出てきます。
生物たちが酒造りに適した環境で働いてもらうには、温度管理も非常に重要であり、杜氏をはじめとする製造責任者が慎重に管理して作り上げてゆきます。
時間と手間をかけ繊細で細やかな味わいに仕上げてゆくのです。
もちろん繊細ながらもしっかりと味わいある吟醸タイプのお酒もあります。
純米大吟醸酒(大吟醸酒)の味わい
精米歩合が50%以下と言うことは、半分以上を削って磨き上げたお米しか使っていないということです。
その分ある程度高価にはなりやすいものの、お酒によってですが複雑な味わいよりも上品で滑らかな飲み口の酒が造れると言えます。
醸造アルコールを使用しない純米大吟醸酒ならば、さらにしっかりとしたうま味やコクのある味わいが楽しめるでしょう。
過度な香りや甘さある酒でなければ大吟醸もしっかりと食中酒として味わって下さい。
そもそも純米大吟醸酒(大吟醸酒)が持つ味わいは、一概に言葉で表すことがなかなかできません。
柄や造りによって香りや味わいは大きく異なるため、飲み比べしてみると楽しいでしょう。
純米大吟醸酒(大吟醸酒)の飲み方
日本酒は温度を変えて様々な味わいが楽しめるお酒ですが、香りや甘さを楽しむタイプの純米大吟醸はお燗向きではありません。
冷やし過ぎも香りが閉じます。
味わいある純米大吟醸酒は、お米本来のうま味とコク、麴由来の自然の甘みや香りが心地好く、優しく、ぬるくお燗酒にして美味しくなる酒も沢山あります。
冷やし過ぎず、冷や(常温)~お燗酒で楽しめる純米大吟醸。
れぞ、純米酒の醍醐味の一つと云えるでしょう。
燗はお酒の真価を発揮するので純米大吟醸のお燗に相応しい酒と出会って下さい。
い酒は冷やして、安い酒はお燗、良い酒をお燗することはもったいない…などということは全くありませんのでそれぞれの良さを楽しんで下さい。
特別純米酒
ここでは、特別純米酒に関して解説します。
特別純米酒とは
特別純米酒とは、原料は純米酒と同じく米・米麹で、精米歩合が60%以下または特別な醸造方法で造られた、香味・色沢が良好な日本酒のことを指します。
つまり、精米歩合が60%を超えている場合でも、「特別な醸造」によって造られている場合は、特別純米酒として売り出されることもあります。
「特別な醸造」とは?
特別純米酒の条件における「特別な醸造」とは、一体どのようなものでしょうか。
実はこの「特別」には、法律上の基準・要件などが明確に設けられている訳でありません。
各酒造蔵等が、自社の酒をどのよう訴求するかによって、特別を冠するのかを決めているのです。
たとえば、「特別」を名乗っている醸造手法には、以下のようなものがあります。
「特別な醸造」の1例
- 農薬等を控えた特別栽培米の使用
- 上槽手法を変える(酒をしぼる)
- 特定の米のみを使用
上記の通り、「特別」が示す内容は様々です。
また、同じ蔵内で作られているお酒と比較し明らかな違いがある場合でも、「特別」の表記が行われることがあります。
端的にイメージを整理すると通常造っているお酒との「コンセプトの違い」を明確にしてアピールしたい場合に「特別」と冠することが多いと言えるでしょう。
そのため、他の蔵であれば「特別」の文字をつけて売り出しているようなお酒でも、先入観を持たずに楽しんでもらうためにあえて付けずに販売している場合もあります。
もし精米歩合が60%以上あるにも関わらず「特別純米酒」として認定されているとすれば、それは何らかの特別な手法が用いられているということです。
その場合、どんなところが特別なのかを調べながら味わうことも、素敵な楽しみ方かもしれませんが飲んで感じて下さい。
特別純米酒の飲み方
特別純米酒には様々な手法で造られたお酒があるため、一概に「この飲み方がベスト」と言うことは難しいでしょう。
一番手っ取り早くおすすめの飲み方を知るには、酒販店の店主やスタッフに聞くのがベストですが、先ずは、ご自身でお酒を、冷や(常温)・お燗酒・冷酒など、様々な温度帯で試して飲んでみることです。
コクや深みのある品であれば、燗にして飲んでみると味わいや旨味が引き立つためおすすめできます。
酒を飲む際はくれぐれも肴とともにどうぞ!
日本酒
ここでは、日本酒の定義やカテゴリーについて解説します。
そもそも日本酒とは
日本酒とは、白米を蒸して麹と水を加え、発酵・熟成させて造ることを指します。
酒税法上は、以下の条件を満たす品が、日本酒としてカテゴリーされます。
日本酒の基準
- 米、米麹、水を材料として使う
- アルコール度数が22%未満
- 濾している(ろ過している)
- 醸造アルコール、糖類、調味料など添加物の合計が米の重さを超えない
お米と水を用いて日本特有の製法で造られており、その起源は縄文時代もしくは弥生時代とも言われる、非常に長い歴史を持っています。
材料を発酵させて造るため、醸造酒の1つに数えられます。
カテゴリーとしてはワインやビールなどと一緒です。
お米を発酵させたのが日本酒、ブドウを発酵させたのがワイン、麦芽を含む麦を発酵させたのがビールです。
日本酒の基本的なカテゴリー
日本酒には様々なカテゴリーがありますが、まずは大きく、「特定名称酒」と「普通酒」の2つに分けられます。
特定名称酒とは、特定の材料や製造手法などの条件をクリアし、特定名称を表示することを許された品のことです。
そして特定名称酒は、以下の種類にカテゴライズできます。
特定名称酒の2カテゴリー
- 純米酒(米と米麹のみ)
- 本醸造酒(米と米麹、醸造用アルコール)
つまり、これまでご紹介してきたお酒は、全て特定名称酒にカテゴライズされるということになります。
そして特定名称酒をさらに使用材料や製造手法によってカテゴライズすると、以下の通りです。
特定名称酒の全8カテゴリー
- 本醸造酒
- 特別本醸造酒
- 吟醸酒
- 大吟醸酒
- 純米酒
- 特別純米酒
- 純米吟醸酒
- 純米大吟醸酒
上記の名称を表示するためには、それぞれに定められた使用材料や精米歩合などの条件をクリアする必要があります。
普通酒に関しては、後ほど改めて解説いたします。
日本酒にはさらなるカテゴリーがある
日本酒の基本的なカテゴリーはこれまでご紹介した通りですが、実はまだ多くのカテゴリーがあります。
たとえば、火入れのタイミングによって以下の3種類にカテゴライズ可能です。
火入れとは、加熱することで殺菌し、酒の質を安定させる工程のことを指します。
火入れによるカテゴリー
- 通常の火入れタイプ
- 生酒
- 生貯蔵酒
- 生詰
通常の日本酒は、貯蔵前と出荷前の2度、火入れを行います。
生酒とは、一度も火入れをせずフレッシュなまま出荷した品のことです。
生貯蔵酒とは、生のまま貯蔵して出荷直前に一度火入れをした品を指します。
そして生詰とは、貯蔵前に一度だけ火入れをした品のことです。
また、貯蔵期間の違いによって「新酒」と「古酒」の2種類に分けられます。
新酒とは、秋に収穫した新米によって冬に出来上がったばかりの、新酒のことです。
フレッシュな味わいを持ち、飲み頃を考えて出荷しますが半面、しぼりたてをはじめ貯蔵期間が短い酒は粗さ、渋さ、若さや固さもある酒も多々あります。
ずは呑み頃のタイミングで飲んでみて、熟成に向く酒であればその後も楽しんでください。
一方で1年以上熟成させた酒は古酒の部類になります。
熟成期間によって味わいは異なりうま味やコク、香りや甘みなど時間に経過と共に広がる複雑味がありまろやかな口当たりに仕上がってゆきます。
1,2、3年の短期の熟成から5年、10年、数十年の味わいまで、時の流れはフレッシュな若い酒とは異なる贅沢な楽しさです。
普通酒
普通酒とは、先ほど紹介した特定名称酒に該当しない品の総称です。
市場に出回っている品の中には、多くの普通酒が存在します。
実は、日本国内に出回っている品の70%程度が、普通酒だと言われているのです。
普通酒の定義は特にありませんが、具体的には以下のような品が普通酒として扱われています。
普通酒として扱われている一例
- 原料米の総重量の10%以上醸造アルコール添加
- コスト、味わいや香りなどの調整のため、醸造用アルコールに加え糖類や酸味料などを添加している
- 純米酒と同じ造りである一方、等級外のお米を使用したお酒(契約栽培で栽培した米を無駄に出来ない)
普通酒には醸造アルコールやその他の添加物米の代用として米糠糖化液等を使用したものもあります。
通常は精米したお米で仕込みますが、精米時に発生する白糠(ある程度磨いた米の糠)を酵素剤で糖化させ、ろ材を用いて純度が高い糖液にして仕込み、コストを大幅に下げた安価な日本酒として製造・販売させています。
しかしその一方で、特定名称酒といっても過言ではない高品質な普通や等級から漏れたお米だけで醸した(等級外なので純米酒とは呼べません)純米酒の様な酒も存在します。
くまでも造り方を基準として分けたものなので一概に日本酒といっても本当に様々な酒が定義に当てはまるのです。
純米吟醸吟醸酒
純米吟醸酒とは、精米歩合が60%以下で造られた、一般的には吟醸造りを行い香味と色沢の良い日本酒のことを指します。
基本的には先ほどご紹介した「純米大吟醸酒」と同様の製法(吟醸酒は大吟醸酒と同様の製法)で造られる酒もありますし、異なる酒もありますが精米歩合は以下の通り異なります。
- 純米吟醸酒(吟醸酒):60%以下
- 純米大吟醸酒(大吟醸酒):50%以下
「それでは、純米大吟醸の方がおいしいってこと?」と思われる方もいるかもしれません。
確かによりお米を削っている純米大吟醸の方が価格は比較的高く、上品で綺麗な味わいになっているお酒が多いと言えるでしょう。
しかし精米歩合の違いはあくまでも個性の1つであり、一概にどちらが優れたお酒だと言い切ることはできません。
そしてこれは、他の特定名称酒にも言えることです。
基本的にはそれぞれの好みに合った品を選んだり、料理や飲み方に合わせて自由に選んだりすることが楽しみ方だと言えるでしょう。
特定名称や精米歩合ばかりに気を取られて先入観を持ってしまうのではなく、実際に口にしてみて自分と合うお酒を見つけることも、とても魅力的な楽しみ方の1つなのです。
の銘柄やランクも含め先入観やご自身の知識に捕らわれずに様々な温度帯を試し様々な肴と共に楽しんでみましょう。
お酒の世界が広がる事でしょう。
純米酒など日本酒には様々な種類があります!
今回は、純米酒をはじめとする日本酒の種類について解説してきました。
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