幅広い種類や飲み方があり、様々な嗜好の方におすすめできるのが、焼酎の大きな魅力です。
一口に焼酎と言っても原料や作り方が幅広く、蔵元ごとに全く異なった味わいが楽しめる点も、特徴的だと言えるでしょう。
そしてその中でも焼酎を好きな方に特におすすめしたいのが、乙類焼酎です。
しかし、「甲類」「乙類」の違いあることは知っていても、それぞれどのような違いがあるのかをイメージできる方は意外と多くありません。
乙類の特徴や魅力を知り楽しみを増やしていっていただけたら幸いです。
そのためこの記事では、乙類の概要や本格焼酎との違い、おすすめの選び方などを紹介します。
乙類焼酎が気になっている方、甲類や本格焼酎との違いが気になっている方は、ぜひともご参考にしてください。
乙類焼酎とは
乙類焼酎は、素材の風味を生かせる蒸溜方法で作り出された焼酎です。
原料には麦や芋、米など様々なものが使用されています。
原料に使用する芋や麦などの素材の味わいや風味がとてもよく生かされており、シンプルに水割りやお湯割り、ロックなどで香りを楽しみながら飲むことがおすすめされます。
元々持つ味わいを楽しみたいのであれば、正にピッタリの品でしょう。
酒税法上、乙類には「単式蒸溜器で蒸溜させたもので、アルコール度数45度以下のもの」との条件があります。
単式蒸溜器とは、1回のみの蒸溜で蒸溜する機器のことです。
単式蒸溜器を使った蒸溜方法は伝統的なものであることから、以前は乙類のことを「旧式焼酎」などと呼ぶことも多くありました。
甲類焼酎との違い
乙類と甲類の区別がつかず、混同してしまっている方も多いと思われるためここで整理します。
両者の違いは、以下のような点で見られます。
甲類と乙類の違い
- 定義(蒸溜方法)
- 味わい
- 飲み方
両者を区別する最も基本的なポイントが、定義(蒸溜方法)の違いです。
両者の定義(蒸溜方法)を並べると、以下の通りだと言えます。
甲・乙の定義(蒸溜方法)
- 乙類……単式蒸溜(一回の蒸溜で原酒を抽出する)で蒸溜した45度以下の焼酎
- 甲類……連続式蒸溜(連続して何度も蒸溜を繰り返す)で蒸溜した36度以下の焼酎
乙類の蒸溜方法は日本で古来より行われてきたものであり、「単式蒸溜焼酎」などと呼ばれることもあります。
元々日本で蒸溜されてきた焼酎は全て単式蒸溜で作られていたため分類は不要でした。
しかし明治時代の終わりになって新しい技術が入ってきたことにより、「甲・乙」の分類が生まれたのです。
甲類の蒸溜に使用する連続式蒸溜器はウイスキーづくりなどによく使用され、20世紀の初めにイギリスから導入されました。
そのため、甲類は「新式焼酎」などと呼ばれることもあります。
両者は蒸溜方法が異なることから、味わいについても違いがあります。
乙類は単式蒸溜によってアルコール以外の香味成分も抽出されるため、原料の風味・味わいが充分に楽しめる品になります。
一方の甲類はもろみを使用して連続して蒸溜するため、無色透明で雑味のない味に仕上がるのが特徴です。
また、単式に比べて効率的な生産が可能なことから、乙類焼酎に比べてお手頃な価格で手に入る点も違いだと言えるでしょう。
乙類は原料が元々持つ味わいや風味を楽しめるため、ロックや水割り、お湯割りなどのシンプルな飲み方が適しています。
冷やしたり温めたりすると、原料が元々持つうまさや香りが味わえます。
一方、甲類は雑味や余計なクセが少ないため、炭酸割りやジュース割りなど、自分の好きな割り方で多種多様な飲み方を楽しめると言えるでしょう。
ただし、ここで理解しておきたいことは、「甲・乙」の区別は優劣をつけるものではなく、あくまでも単なる酒税法上の違いを表しているに過ぎないということです。
本格焼酎と乙類焼酎の違い
近年では乙類焼酎のことを「本格焼酎」と呼ぶこともあります。
実際にラベルなどを見ると本格焼酎との記載があるものもあり、焼酎の本場九州で蒸溜される高級な焼酎などの多くが、乙類焼酎であると言えるでしょう。
ただし、厳密な整理においては、乙類焼酎と本格焼酎とは別のものです。
本格焼酎と明記するためには、以下のような条件をさらに満たす必要があります。
本格焼酎の条件
- 麹(こうじ)を使用している
- 単式蒸溜によって蒸溜している
- 特定の原料と麹を使用して蒸溜されている
- 水以外の添加物を一切使わずに蒸溜している
ここで言う「特定の原料や麹」とは、米や麦などの穀類・芋類・清酒粕・黒糖の4品目か、国税庁長官が定める49品目の原料や麹のことです。
つまり単式蒸溜で作ったとしても、余計な添加物などが入っていれば本格焼酎とは認められません。
上記の条件をクリアしたものだけが、本格焼酎として呼称されます。
上記にある本格焼酎の定義は、平成14年になって初めて確立されました。
本格焼酎としての呼称は1971年からスタートしていますが、現在の定義が確立されてからは20年程度ということになります。
本格焼酎を造っている焼酎の蔵元は、文字通り本格的な焼酎を蒸溜していることに誇りを持って焼酎造りに取り組んでいます。
そのため「乙類=本格焼酎」ではないことは、少なくとも認識しておくことが大切でしょう。
「甲と乙」の違いとは異なり、乙類焼酎と本格焼酎には、焼酎としてのこだわりの違いがあるのです。
本格焼酎は原料や製法、蔵元などによって様々な味わいがあり、焼酎そのものを楽しみたい方にはおすすめできます。
乙類焼酎を好んで飲む方は、本格焼酎にも挑戦してみましょう。
乙類焼酎の選び方
ここでは、乙類焼酎の選び方として考えられるものを紹介します。
種類
選び方としてまず挙げられるのが、原料のバリエーションです。
乙類焼酎には、以下の通り様々な原料のバリエーションがあります。
原料のバリエーション
- 麦
- 芋
- 米
- 黒糖
- 泡盛
麦は、クセのないすっきりとした飲み口が人気です。
カロリーが低く糖質がゼロであるため、健康を気にしている方や女性などにも人気が高いと言えます。
二階堂やいいちこなど、全国的にも有名でお求めやすい品が多数あります。
すっきりと飲み口が軽快なため、どんな料理とも合う品です。
普段の晩酌などに、お手頃な製品を選ばれてはいかがでしょうか。
芋は、独特の甘みや香り、濃厚な味わいが楽しめます。
強いクセがある商品もあり苦手と言う方も多いのですが、そのクセこそがたまらないという愛好家の方も多数いる品です。
また、非常に有名な黒霧島のように香りがまろやかで芋の甘みを感じられる品も多数あるため、焼酎初心者の方にもチャレンジをおすすめできます。
米は、日本酒のような甘味が魅力的です。
濃厚かつフルーティー、そしてクセがない味わいは、日本酒愛好家にもおすすめできます。
刺身や和食との相性が良く、和食派の方にはピッタリです。
白岳など人気の銘柄も多く、マイルドですっきりしているため焼酎を飲みなれていない方にもおすすめでしょう。
甘い香りの焼酎が好きと言う方は、黒糖焼酎という選択肢もあります。
黒糖の甘い香りや風味を感じながら糖質やプリン体が全くないため、健康志向の方や女性にもピッタリでしょう。
蒸溜方法
蒸溜方法にも、様々な違いがあるためこだわりたいところだと言えます。
主な蒸溜方法は、以下の通りです。
主な蒸溜方法
- 減圧蒸溜
- 常圧蒸溜
減圧蒸溜とは、蒸溜器内の圧力を下げることで沸点を下げ(40~50℃程度)、低温で蒸溜をする方法です。
低温蒸溜によってフルーティーな香りが強まり、すっきりとした味わいに仕上がります。
低温によって、もろみの中にある沸点の高い雑味などを抽出することなく原酒を取り出すことができるためです。
一方の常圧蒸溜とは、高温で蒸溜することで原料の香り・風味を色濃く反映させる方法です。
古来より利用されている手法であり、多くの焼酎は常圧蒸溜で造られています。
高温での蒸溜により原料の成分を多く抽出できますが、同時に雑味成分も抽出してしまいます。
しかし、上手に仕上げることで、複雑な味わいを持った製品を生み出すことが可能です。
焼酎初心者や香りのきつい品が苦手な方には減圧蒸溜がおすすめされ、原料が元々持つ味わいを楽しみたい方には常温蒸溜が向いているでしょう。
魔王や二階堂、いいちこや吉四六などは、減圧蒸溜によって蒸溜されています。
一方で、村尾や赤兎馬、黒・白・赤霧島などは常温蒸溜によって作られており、焼酎らしい味わいが楽しめます。
アルコール度数
アルコール度数も、選択肢の際にはこだわりたい項目の1つです。
元々焼酎にはアルコール度数が20~30度程度のものが多くあり、市販されている品では20度と25度の品が多いと言えます。
20度であればアルコールの低さから口当たりがマイルドで飲みやすさが高く、ストレートやロックで楽しみたい方にはおすすめできるでしょう。
焼酎の産地として知られる宮崎県や大分県などでは、20度の焼酎も好まれるため多数出回っています。
20度の焼酎の方がお手頃なため、お酒にあまり強くなくお手軽に楽しみたい方にはおすすめかもしれません。
一方、焼酎本来の味わいを楽しみたいのであれば度数が高い方が良いため、25度の品を探してみることをおすすめします。
全国的にも25度の焼酎が一般的ではあるため、購入もしやすいでしょう。
同じ銘柄でも20度と25度のものが販売されていることも多いため、飲み比べしたり飲み方によって使い分けたりすると楽しめます。
また、泡盛などではアルコール度数40度の品も多数ある(定義上は45度まで可能)ため、焼酎が好きでもっと楽しみたいという方はチャレンジしてみることをおすすめします。
産地
産地ごとに焼酎を集めて楽しんでみるのも、魅力的な味わい方だと言えます。
焼酎の産地としては、以下の土地が有名です。
焼酎の主な産地
- 鹿児島
- 宮崎
- 大分
- 熊本
- 沖縄
鹿児島は芋焼酎の一大産地として全国的にも有名な土地です。
芋が好きな方なら、鹿児島産の品を集めてみると楽しいでしょう。
一方で芋焼酎に対して「香りがきつい」などと苦手意識を持っている方でも、中にはマイルドな口当たりの品もあるため、様々な蔵元を探してみることをおすすめします。
鹿児島にはおよそ100軒もの蔵元があり生み出している焼酎もそれぞれ異なるため、お気に入りの一本が見つけられるはずです。
宮崎では、芋だけでなく麦や米など様々な原料の焼酎が製造されています。
全国的にも有名で多くの人が親しんでいる「黒霧島」や、そば焼酎として全国的に高い人気を誇る「雲海」など、宮崎だけでも様々な個性を持った品と出会えるでしょう。
麦焼酎を好んで飲まれる方には、大分の焼酎もおすすめです。
テレビコマーシャルなどでも流れて全国的に高い知名度を誇る大分麦焼酎「二階堂」の登場により、大分は麦焼酎の産地として一躍有名になりました。
その他にも比較的お手頃な価格で楽しめる下町のナポレオン「いいちこ」など様々な麦焼酎があり、多くの焼酎好きに愛されています。
米焼酎が好きな方は、熊本の品を探してみると良いでしょう。
熊本県人吉市が米焼酎のルーツであり、「吟香鳥飼」や「白岳」などは多くの人に愛されるアイテムです。
沖縄で有名な泡盛は、原料にタイ米、麹には黒麹を使用して製造される有名な焼酎です。
独特の香りや味わいには愛好者も多く、他の焼酎では味わえない特別な体験ができるでしょう。
特定の産地で異なる酒蔵の焼酎を集めてみても楽しいですし、産地別に様々な種類の品を飲んでみるのも魅力的です。
価格
焼酎を選ぶ際には、価格も重要な選択基準の1つになります。
様々な原料や蒸溜方法で作られるために幅広いバリエーションがあり、値段も高額なものからお手頃な物まで様々あります。
毎日の晩酌で飲む焼酎であれば、お手頃な品を探すのも良いでしょう。
お手頃と言ってもしっかりとした味わい・風味が感じられるものばかりであり、パックで販売されている品でも充分に楽しむことが可能です。
セット売りでより安価に購入できるケースもあるため、「毎日お酒を楽しみたい」と言う方にも大きな負担になりにくいと言えます。
また、特別な日に楽しむ場合や大切な人への贈り物などには、プレミアム焼酎と呼ばれる焼酎がおすすめでしょう。
「魔王」「森伊蔵」「村尾」のいわゆる「3M」と呼ばれる焼酎は、いずれも根強いファンがいるプレミアム焼酎です。
また、麦焼酎が好きな方へは幻の焼酎と呼ばれる「百年の孤独」をお渡しすると、大切に思っている気持ちを充分に伝えることができるでしょう。
こうして利用シーン別に全く異なるアイテムの中から自由に選択できることも、焼酎というお酒の大きな魅力の1つだと言えます。
ここで紹介した以外にも数えきれないくらいの沢山の種類が存在するため、探すだけでも楽しめるでしょう。
飲み方
選び方として忘れてはいけないのが、飲み方から考えることです。
乙類は原料本来の味わいや風味を楽しめるため、以下のようにシンプルな飲み方が特におすすめされます。
乙類のおすすめの飲み方
- ストレート
- ロック
- 水割り
- お湯割り
- 前割り
乙類の味わいや風味を充分に楽しむには、ストレートで飲むのが最適だと言えます。
チェイサーとして水を用意し、少しずつゆっくりと味わいましょう。
アルコールがきつくて飲みづらい方は、20度の焼酎を試してみるのもおすすめです。
ロックで飲むとストレートより飲みやすさが増し、時間とともにゆっくりと味わいが変わってくる様子を楽しむことができます。
なるべく大きくて丸い氷を用意し、グラスや水を冷やして氷が溶けにくいようにすると、ゆっくりと楽しめるでしょう。
すっきりとした味わいを楽しみたいのであれば、水割りもおすすめです。
まずグラスにたっぷりの氷を入れ、基本の焼酎:水=6:4(ロクヨン)をベースにご自身が飲みやすいと思う割合で水を入れましょう。
水道水でも問題ありませんが、できればミネラルウォーターを用意すると、より雑味のないすっきりとした味わいが楽しめます。
軽やかな味わいの焼酎や、水で割っても香りや味わいが感じられる濃厚な味の品が向いているでしょう。
香りをさらに引き出したい方には、お湯割りがおすすめです。
小さめの器にお湯を先に入れ、後からゆっくりと焼酎を注ぎます。
この順番で入れることで自然と対流が生まれ、かき混ぜなくても温度や濃度が均一になるのです。
芋焼酎などの香りを楽しむのが好きな方は、ぜひともお湯割りを試してみてください。
前割りとは、あらかじめ水で焼酎を割って、数日間寝かせた後に飲む方法です。
水と良くなじみ、アルコールの刺激を押さえたまろやかな味わいが楽しめるようになります。
香りの強い芋などであれば、前割りで飲んでも香りが失われずにマイルドな味わいが楽しめるでしょう。
合わせる料理
一緒に食べる料理に合わせて、バリエーションを変えるのも楽しい選び方です。
料理に合わせる焼酎の選び方例
- お刺身×米(ロックやストレートなどで)
- 揚げ物×麦(水割りやソーダ割りなどですっきりと)
- 豚の角煮×芋(お湯割り)
上記はあくまでも一般的な例であり、ご自身の好みによって組み合わせは無限に広がる所が大きな魅力です。
料理から焼酎を考えるようになると、毎日の食卓がさらにバリエーション豊かになり、楽しいものになるでしょう。
「今日は○○が食べたいから、合わせるのは××で飲み方は~」などと組み合わせを考える楽しさは、焼酎好きの特権だといっても過言ではありません。
乙類はしっかりとした味わいが楽しめるため、決して料理にも負けないでしょう。
乙類焼酎は幅広い方におすすめできます!
今回は、乙類焼酎の概要や選び方について紹介してきました。
ご自身にとって最適な乙類焼酎を見つける、良い材料となりましたでしょうか?
乙類は原料の風味や味わいを充分に堪能できるため、幅広い方におすすめしたいお酒でしょう。
酒のはしもとでは、目利きした焼酎や純米酒を多数販売しております。
詳しくはこちらをご覧ください。